A Study on Symbolism by Colour Terms in Tess of the d'Urbervilles
著者
武久 文代
(Takehisa fumiyo)
教養部
版
publisher
出版地
奈良
出版者
奈良大学
上位タイトル
奈良大学紀要
(Memoirs of the Nara University).
Vol.13号,
(1984.
12)
,p.80-
94
識別番号
ISSN
03892204
抄録
英文学のジャンルにおける 'novel’-長編小説-とはいかなる意味を持つものであろうか.‘OED’によれば,いくつかの意味の推移の後に, ‘A fictitious prose narrative of considarable length, in which characters and actions representative of real life are portrayed in a plot of more or less complicity' と説明されている.すなわち,‘novel' の要素として,まず,ある程度の`length'を持ち,`prosestyle'であること,更に,多少とも複雑な構成に基く‘fiction' であることの3点があげられている.この観点から,少くとも‘short story' 一いわゆる短編小説一との区別も言及されるであろうし,又,私小説的性格のかなり濃厚な日本の小説との相異も考慮されるべきものがあろう.
‘fiction' である点では,韻文形式の作品とも共通性があるが,小説の中に読者が読み取るべきものは, William Hazlitt (1778-1830) が"On the English Novelists''において述べた一節に要訳されている.
「小説には人間と風俗との精細な模倣が見出される.入り組んだ社会の現実の構成,実世間に出ると出会う社会の構成がそこに見られる.詩が(何かより神聖なもの)を持つとすれば,小説には一層人間的なものがある.我々は人間の言動の動機や性格を知らされ,実例によって美徳や悪徳についての考えを学び取り,ロマンスという優美な媒体を通して世の中についての知識を与えられる.」
こうした小説の形態を持った初期の作品としてあげられるのは, John Bunyan の"The Pilgrim's Progress" であり, Daniel Defbe の"Robinson Crusoe" であるが,それ以後,18世紀のイギリス小説の開花から発展の時代に続く,同世紀後期の不毛の時代とも言われる時を経て19世紀初期の再開花の時代,それに続くイギリス小説の全盛とも言うべき Victoria 期の時代へとの経過をたどるのである.