奈良大学紀要
(Memoirs of the Nara University).
Vol.23号,
(1995.
03)
,p.15-
28
識別番号
ISSN
03892204
抄録
わが国で Death Education の普及に最も貢献している人と言えば、アルフォンス・デーケンと共に日野原重明を挙げなければならない。日野原は医者であり、プロテスタソトの信者。現在八十歳を越える高齢でありながら、聖路加看護大学学長を務める。彼のサナトロジーはまず第一に、半世紀を越える内科医として、また「死の川の船頭」としての豊富な経験から生まれたものであるが、同時に患者から学ぶという姿勢、キリスト教の信仰、オスラー博士との出会い、文学の深い理解等に基づいている。そこで彼は、死から生を見るという観点の必要性を説き、今日の青年に是非とも Death Education が必要であると考える。ターミナル・ケアでは、単なる延命よりも生命の質が、生の深さが必要であり、〈死の受容〉にあたっては信仰が最も重要な役割を果たすであろうと言う。生命の質の向上、信仰の必要性はまたわれわれの人生全体にも通じることである。