奈良大学紀要
(Memoirs of the Nara University).
No.50
(2022.
2)
,p.129-
145
識別番号
ISSN
03892204
抄録
言語類型論でいう証拠性(evidentiality)という文法的カテゴリーをメタ表象(metarepresentation)の視点から、英語、日本語の具体例をあげて再検討する。証拠性は情報源を明示することと密接にかかわるが、その言語上の具現化は言語によって異なる。証拠性を具現する例としてよく取り上げられるマイナー言語とは異なり、英語や日本語では証拠性を特徴的に表す形態素ないし小辞(particle)は一般にないとされているが、とりわけ日本語の感覚・感情表現や願望表現には情報源と当該人物の関係が証拠性と密接にかかわることを論じる。また、情報源を明示する表現である、英語の ’according to NP' 、日本語の「NPによると…という(ことだ)」を取り上げ、その用法の語用論的な変容に言及する。